今回はインド神話において、神々の敵対者とされる悪魔的な存在、アスラについて紹介します。
名称 | アスラ |
別名 | 阿修羅/アフラ |
種族 | 悪魔/守護神 |
役割 | 八部衆 |
出典 | ラーマーヤナ 金剛経 |
悪魔とされたインド神アスラ
アスラはインド神話において、悪魔的な存在として知られています。
神々の敵対者であり、アスラという名前は固有名詞ではなく種族名。
バラモン教の時代には高位の神として存在していましたが、ヒンドゥー教の時代に入ると悪魔として知られるようになりました。
しかし日本では、仏教と融合した密教が登場すると、仏法を守る神として「阿修羅」の名で神として登場します。
インドの神から悪魔となったアスラ
現代のアスラはインド神話における悪魔ですが、元々は神として君臨していた存在です。
アスラが悪魔になった理由は、インドの宗教が大きく関係しています。
インド神話の起源は『リグ・ヴェーダ』という文献が始まりとされている。
これは、現在のインド北部にあるパンジャーブ地方を拠点としたアーリア人の宗教、バラモン教の教典です。
この文献に登場するアスラ親族の司法神ヴァルナや契約神ミトラは、その中心的な神でした。
しかし、バラモン教は司祭階級に権力が集中しすぎたことで反対運動が起こり、バラモン教は衰退の一途を辿っていくことに。
バラモン教が衰退していくと同時に、インド土着の民ドヴィダ人の文化をつぐ宗教ヒンドゥー教が盛んになります。
ヒンドゥー教の教典である『ヴィシュヌ・プラーナ』などの文献によって、ヴィシュヌやシヴァなどインドの土着神が中心的な神々となりました。
また、ヒンドゥー教はバラモン教を否定することなく、部分的に取り込みながら神話を発展させていったことで、アスラはヴィシュヌやシヴァ等の敵役として悪魔にされたのです。
アスラが阿修羅へと変わった経緯
プラーナの文献の創世神話『乳海撹拌(にゅうかいかくはん)』によると、インド神ヴィシュヌらが所属しているデーヴァ神族がアスラと共に不死の霊薬アムリタを作るために強力している。
つまり、アスラとインドの土着神は初めから敵対関係では無いことがわかります。
しかし、アスラの1人はアムリタを与えてもらうことが出来ず、アムリタを横取りしたアスラがヴィシュヌに首を切られるなど、不遇な扱いを受けている。
プラーナ文献の段階では、ヴリトラの恐ろしさが強調されたり、シヴァの破壊欲から生まれたジャランダラが登場したりと、アスラは悪魔としての性格を強めていった。
後にインドでは仏教が信仰を集めますが、4世紀に入って成立したグプタ朝がヒンドゥー教を保護したことで、2つの宗教は融和をはかることに。
こうして、2つの宗教が合わさったのが密教です。
密教におけるアスラは、仏法を守るために戦う阿修羅として仏となり、仏教に帰依したヒンドゥー教の神の1人として扱われるようになる。
これが中国を経由して、日本でも阿修羅として広く知られる仏となりました。
仏となった悪魔アスラのまとめ
日本では、3つの顔を持って6本の腕を持つ姿で仏像が作られる阿修羅。
奈良県の興福寺にある、阿修羅像が有名です。
元々はインド神話における悪魔的な存在で、神々の敵対者とされてきました。
しかし、時代が進むにつれてさまざまな宗教観念が混ざり合い、日本では仏として信仰されています。
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