キリスト教と聞くと「罪を憎んで人を憎まず」という言葉にあるように、全人類に許しを与える平和的な宗教のイメージを持っている方が多いと思います。
現代では世界最大とも言える宗教ですが、キリスト教信者がここまで増えた裏には恐ろしい歴史が隠されているのです。
キリスト教によって悪魔にされた神々
同じ神であっても、思想や宗教観によっては、悪魔として捉えらえることは珍しくありません。
この特徴は多神教の宗教よりも、一神教(信じる神は1人)の宗教によく見られ、自分たちが信じる神様以外は悪魔だと教えられることも。
一神教で有名なユダヤ教やキリスト教では、この教えが特に強いことで知られています。
大魔王サタンを生み出したキリスト教
キリスト教で信者たちが救いを求めるのは、誰もが知っているイエス・キリストです。
イエス・キリストが唯一の神であると信じている信者達にとっては、異教徒の神々は全て敵対する存在でしかありません。
その結果、異教徒の神々をあらゆる悪魔と結び付けて、キリストの敵対者としてしてきました。
ちなみに、悪魔の王であるサタンもキリスト教によって悪魔とされた神の1人です。
魔王サタンは、元々ギリシャ神話に登場する豊穣を司る神「パン」でした。
パン神は好色な性格であり男性のシンボルともされていたことから、キリスト教徒の反感を買い、神ではなく悪魔と変化させられてしまいます。
頭に角を生やし、山羊の足を持つパン神の姿は、神話に登場する神ではなく悪魔のシンボルとされてしまいました。
魔王サタンというと、山羊と人間を組み合わせたような姿で描かれることが多いのは、こうした理由です。
現代で魔界の王と言えば、ほとんどの人がサタンと答えるでしょう。
しかし、このサタンは元々ギリシャ神話に登場する豊穣の神様であり、悪魔ではありませんでした。
キリスト教徒の、異教徒の神は悪魔だとする考え方が悪魔の王であるサタンを作り出してしまったのです。
天使と戯れるギリシャ神話に登場するパン神とは違い、キリスト教徒にの手によって悪魔の王にされたサタンは、禍々しい姿に変わり果ててしまい豊穣の神ではなくキリストと人間の敵として認識されるようになってしまいました。
キリスト教によって続々と闇堕ちする天使たち
キリスト教によって神と人間の敵対者とされたのは、異教徒の神々だけではありません。
異教徒の神々に仕える天使すらも、キリスト教によって闇堕ちさせられています。
闇に堕ちた天使、つまり「堕天使」と呼ばれる存在もキリスト教によって創り出された存在なのです。
堕天使とは、神に仕え人間を導くはずの存在が欲望に溺れてしまい、悪魔と変化してしまった天使たちを指します。
一神教であるキリスト教によって、異教徒の神や神々に仕える天使を悪魔として聖書に登場させたことで数多くの悪魔が誕生することになりました。
こうしてキリスト教の広がりと共に、神や天使、精霊たちが悪魔や堕天使として生まれ変わり、人々に恐怖を与える存在になったのです。
キリスト教と魔術の関係
儀式や占い、呪術などの歴史はとても長く、有史以前から存在しています。
それらを起源として、宗教観や思想の影響を受けて世界各地で発展していったものが魔術です。
魔術の目的は、解明されていない自然現象や世界の理(ことわり)を知ること、祈願成就、不老不死や悪魔との契約など、人知を超えた力を手にするという目的もありました。
それでは、魔術とキリスト教にどのような関係があるのかを見ていきましょう。
さまざまな発展を見せた魔術
日本でも太占(ふとまに)や雨乞いなど、魔術のような占いや儀式は古くから存在しています。
海外の古代文明でも同様に、メソポタミア文明では星占い、古代エジプト文明では錬金術の基礎が誕生しました。
これらは自然現象や世界の理を解明しようとしたギリシャ・ローマ時代の哲学者にも影響を与え、アリストテレスによる4大元素は錬金術の基礎に、プトレマイオスの天動説は星占いに応用されています。
また、数学者として有名なピタゴラスは数秘術を編み出しました。
こうして多種多様な魔術が発展していきましたが、3世紀頃に世界各国でキリスト教が普及したことで、魔術は異教徒が使うもので悪であるという思想から否定されたことで西洋魔術が一時期衰退していきます。
西洋魔術が衰退していく一方で、中国では「気」という概念が誕生し、陰陽五行説や気功が発展していきました。
日本では、陰陽師が活躍していた歴史があるように陰陽道や風水、結界というかたちで現代まで引き継がれています。
キリスト教が魔術を批判する理由
西洋魔術がキリスト教と共に衰退していきましたが、11世紀頃から再び西洋魔術が復興していきます。
黄金を錬成する研究である「錬金術」が十字軍の遠征と共に西洋へと渡り、そこから不老不死を実現する「賢者の石」の研究へ変わっていきました。
ここから、タロットカードの基礎となったとも言われるユダヤ神秘思想のカバラ、生命の樹、旧約聖書に隠された秘密を解き明かすためのユダヤ数秘術ゲマトリアなど数多くの魔術が注目を集めることに。
魔術にはキリスト教以前の宗教的思想も深く残っているので、異教徒の神を悪魔とするキリスト教は魔術を一貫して批判しました。
しかし、キリスト教は魔術を一切使わなかったのかというと、そんなこともありません。
イエス・キリストが起こすさまざまな奇跡も魔術的で、悪魔を祓うエクソシストも教会の公職です。
魔術を全否定することは、自分たちの宗教も否定することになってしまいます。
その結果、キリスト教が使う魔術は善なる白魔術、異教徒が使う魔術は悪魔と契約して行使する黒魔術だと区別することでキリスト教が使う魔術を正当化するようになりました。
こうして黒魔術は、悪魔と契約して使うものというイメージが付けられることに。
魔術は悪魔と血で署名して契約し、契約が終了すると自らの魂を代償として差し出すなど、その方法や悪魔を呼び出すための召喚術が盛んになったのです。
地下に潜った黒魔術
科学が進歩して近代化と共に、魔術や悪魔、召喚術などは非科学的なオカルトとして認知されるようになりました。
こうして魔術や神秘的な儀式を信仰する人たちは地下に潜り、秘密結社として暗躍するようになります。
有名な秘密結社であるフリーメイソンやイルミナティなどもこうした背景があり、多数の悪魔を生み出したキリスト教と対抗するために結成された組織だという説も。
世界的にも圧倒的な信者を獲得しているキリスト教ですが、見方を変えると悪魔の大王サタンを創造した宗教でもあるのです。
白魔術と黒魔術の区別に関しても、キリスト教にとって都合の悪いものは「黒魔術」と判断しているだけであり、思想の違いや宗教観によって分別されているだけと言えるでしょう。
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