イギリスのスコットランド近海に、小さな無人島が存在しています。
全長約2㎞、幅は約1㎞というとても小さな島の名は「グリュナード島」。
今回は、世界から「最悪の島」とも呼ばれるグリュナード島を紹介します。
炭疽菌の実験場 グリュナード島
グリュナード島は、さまざまな生物兵器や炭疽菌の実験場として利用されていた歴史があります。
そのため、この島全体が炭疽菌に汚染されており上陸する者の命を容赦なく奪っていくのです。
危険度MAXの炭疽菌
初めからグリュナード島が「最悪の島」と言われていたわけではありません。
19世紀後半には数名の島民が居ましたが、1920年以降は人の姿もなく、動植物のみが生息していました。
そのまま平和な小島としての役目を終えるきっかけとなったのが、1939年に起こった第二次世界大戦。
戦争で使うための化学兵器や生物兵器の開発が各国で進められる中、グリュナード島はイギリス軍に買い取られます。
その後、この島は最悪のウイルス「炭疽菌」をばら撒くための爆弾投下実験が繰り返さることに。
オウム真理教が首都圏へばら撒こうとしていたことでも知られる、炭疽菌は殺傷能力が高いわりに培養も比較的簡単なため、生物兵器として利用されやすい細菌です。
アメリカ疾病予防管理センターでは、炭疽菌をペストやエボラウイルスと同レベルの危険度として位置付けています。
それほど危険な細菌によって島全体が汚染されているのだから、上陸するのもままならない。
炭疽菌によって死に絶えた生物
イギリス軍は、これだけ危険な細菌兵器をナチスが支配するドイツの街に散布する計画を立てていました。
そのためのシミュレーションを、1942年にグリュナード島で行った際に悲劇が起こります。
除染すれば簡単に細菌を殲滅できると考えられていましたが、実際に試してみると当時の技術力では炭疽菌を完全に除去することができなかったのです。
その結果、実験場として使われたグリュナード島に生息していた動物たちは全滅。
そのまま何十年もグリュナード島に残った炭疽菌は消えることなく「最悪の島」として誰も立ち入ることができない島になったのです。
現在のグリュナード島
生物が存在できなくなった島に転機が訪れたのが、1986年。
炭疽菌に汚染されたまま放置しているこの島をなんとかしようと、島全体をホルマリンで消毒する計画が立てられました。
この計画によって島全体の細菌が死滅し、1990年に当時のイギリス国防次官がグリュナード島を訪れて安全を宣言しています。
その結果、公式的には立ち入り禁止区域ではなくなったものの、ただのパフォーマンスに過ぎないという声も未だに聞こえている。
今でも炭疽菌が残っているという噂は後を絶たず、現在でもわざわざグリュナード島を訪れて上陸する者はほとんどいない…。
40年以上もの間イギリス政府によって厳重に封鎖されてきたこの島も、第二次世界大戦が残した負の遺産の1つとも言えるでしょう。
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