黒魔術と聞くと、六芒星や五芒星を中心に描いた魔法陣や、悪魔との契約を行う儀式のようなイメージをされるかもしれません。
魔術という言葉自体、日本だとあまり馴染みがありませんよね。
日本だと呪術や陰陽道、神道などの方が知られています。
しかし、古来よりさまざまな文化や宗教観、思想を取り入れてきた日本の黒魔術は独自の進化を遂げてきました。
そのようにして現代の日本でも、さまざまな形で黒魔術が伝わっているのです。
今回は、その中でも有名な日本の黒魔術を紹介しています。
復讐に使われる最強の黒魔術「蠱毒」
蠱毒(こどく)は、蠱道、蠱術とも呼ばれ、犬神や猫鬼など生き物を使う残忍な黒魔術の1つです。
元々は古代中国で行われていた呪術で、百種類のあらゆる虫や爬虫類などを集めます。
そして5月5日に1つの壺に入れて共食いさせ、最後に生き残ったものを魔術に使うというものです。
蠱毒に必要なもの
蠱毒を行う際に必要なものは以下の通り。
- あらゆる虫や爬虫類を100以上
(ヘビ、ムカデ、カエル、蜘蛛、トカゲなど) - 大量の生き物を詰められる蓋つきの壺
蠱毒の手順
蠱毒の手順は以下の通りです。
- 壺の中に全ての生き物を詰めて蓋を閉じる。
(この時に生き物の数が多いほど呪いの力が強くなる) - 共食いをして最後の1匹になるまで待つ。
- 共食いが完了したら、その1匹を使って相手に呪いをかけます。
呪いの方法は2つ。
生き物を生きたまま使う場合
呪いたい相手の念を込めながら、竹筒などの容器にその生きものを閉じ込める。
それを呪いたい相手にバレないように、家の庭に埋めたり部屋に隠したりして呪います。
生き物を殺めて使う場合
最後に残った1匹を殺め、それを材料にして蠱毒の呪薬を作ります。
完成した呪薬を相手に振りかけたり、食事に混ぜたりすることで相手に強力な呪いを掛けることが出来ると言われている。
蠱毒の注意点
蠱毒は人を呪う魔術の中でも、かなり強力な部類です。
生き物を使っても呪いが果たせなかった場合、術者が生き物たちの念によって呪い殺される可能性も。
強力な魔術なだけに、呪いを返されたときのリスクも覚悟しておきましょう。
犬の霊を使役する「犬神の呪法」
犬神の呪法とは、犬の霊を使った魔術の1つです。
この魔術は他人を呪いによって不幸にさせるだけでなく、術者に金運をもたらす効果も見られます。
その理由として、犬神とは家を守るために憑依する霊であり、犬神を使役する家の者は代々「犬神」として祀らなければなりません。
もし、犬神をぞんざいに扱うようになってしまうと、その家には災厄が訪れることに。
犬神は先祖代々伝わるもので、祖先の誰かが犬神を使役していた場合、その家に住み着くようになります。
その家に生まれた子孫は犬神を操れるようになり、嫌いな相手を呪ったり、金運の恩恵を受けることが出来るようになるのです。
犬神の呪法は、陰陽道の流れを受けた「いざなぎ流」などに伝わり、現在では民間宗教の1つになっています。
鬼子母神髑髏法
鬼子母神髑髏法(きしもじんどくろほう)は、相手の家庭そのものを破壊するような強力な黒魔術です。
家庭を壊し、心を病んだところで相手の懐に潜り込む略奪愛の呪術としても有効とされています。
鬼子母神髑髏法の歴史
500人もの子どもを育てながらも、人の子を喰らっていたと言われてる鬼子母神ですが、釈迦の導きによって鬼子母神は子どもための守護神になりました。
髑髏法は、鬼子母神が使用していた呪術の1つで、敵対する人間を死に至らしめることも出来る強力なものです。
呪いたい相手の家庭を壊滅させたり、精神が崩壊するまで追い込んだりする内容から、不倫による略奪愛や相手に対する恨みに使われてきました。
鬼子母神髑髏法に必要なもの
鬼子母神髑髏法を行う際に必要なものは以下の通り。
- 祭壇(白い布を掛けたテーブル)
- 沈香
- 供物(お水・お花など)
- 人間の髑髏(墓地などから入手)
鬼子母神髑髏法の手順
鬼子母神髑髏法の手順は以下の通りです。
- 新月の夜に沈香を焚きます。
- 被甲の印を結んで、鬼子母神の陀羅尼(だらに)を暗記出来るようになるまで、新月の夜の度に繰り返す。
- 暗記してスラスラと言えるようになったら、部屋を清浄にし、水を浴びて自身の体を清める。
- 祭壇を設置して供物を備えたらその前に正座し、沈香を焚いて髑髏を備えます。
- 披甲の印を結び、相手への念を込めながら鬼子母神の陀羅尼を108回唱えた後、髑髏を加持する。
- その髑髏を持って相手の家に行き、絶対に見つからない場所に隠したら完了です。
鬼子母神髑髏法の注意点
この魔術を実際に行うのであれば、墓荒らしや家宅侵入罪などで捕まる可能性も十分考えられます。
もちろん、呪術としてもかなり危険な部類ですので、髑髏の災いが術者に掛からぬように終了後は「オン・ドドマリ・ギャキテイ・ソワカ」と自分に向けて21回、鬼子母神の真言を唱えるのが鉄則です。
古来から行われた日本の黒魔術「丑の刻参り」
日本で最も有名な呪術といえば、丑の刻参りだと言えるでしょう。
代表的な黒魔術でもある丑の刻参りは、丑三時(午前2時~2時半頃)に儀式が行われることから丑の刻参りと呼ばれるようになりました。
丑の刻参りの歴史
神社の御神木に呪いたい相手に見立てた藁人形を釘で打ち付ける丑の刻参りは、「太平記」や「平家物語」にも記述があることから、日本古来の呪術であることがわかります。
また、丑の刻参りが最も盛んだったのは江戸時代で、浮世絵や浄瑠璃にも丑の刻参りを題材にしたものがいくつも伝わっているのです。
丑の刻参りに必要なもの
丑の刻参りを行う際に必要なものは以下の通り。
- 藁人形1体
- 白装束一式
- 神鏡
- 五寸釘
- 金槌(かなづち)
- ろうそく3本
- 五徳
- 櫛(くし)
- 高下駄1足
丑の刻参りの手順
丑の刻参りの手順は以下の通りです。
- 呪いの対象となる相手の髪の毛や爪を藁人形に詰める。
- 全身を水で清めたら、白装束を着て神鏡を身につけます。
- 五徳を逆さにして3本の蝋燭(ろうそく)を付けたら、それを頭に乗せて口に櫛(くし)を加える。
- 丑の刻(午前2時~2時30分)に高下駄を履いて、藁人形、五寸釘、金槌(かなづち)、神社の御神木へと向かいます。
- 御神木に藁人形を当て、心臓の位置に相手を念じながら五寸釘を1本打ち込み、藁人形は御神木に打ち付けたままの状態にして帰りましょう。
- ここまでの手順を、丑の刻になる度に連日行います。
- これを7日間続けて行い、最終日である7日目に五寸釘を使い切るようにしますが、誰か他の人にその姿を見られたり1日でも日が開いてしまったら再び1からやり直しです。
- 最終日である7日目が終わって帰宅する途中に黒い牛が現れたら、それをまたいで通過することで儀式は終了となります。
丑の刻参りを行う際の注意点
呪い返しという言葉もあるように、丑の刻参りを行っている最中は誰にも見られてはいけません。
目撃されることで呪いの効力が失われるだけでなく、最悪その呪いが自分に降りかかってくることも考えられます。
また、現代では通報されたり神社の器物損壊として逮捕される可能性も。
日本に伝わる黒魔術まとめ
黒魔術は海外だけのものではありません。
日本でも古くから呪術師がいたように、それは現代にも伝わっています。
これらは文献や絵画にも残されていて、今でもアニメや漫画にもよく登場することから、漠然とした知識を持っている方も多いでしょう。
特に最近だと、少年ジャンプの人気漫画、呪術廻旋(じゅじゅつかいせん)によって、呪いやまじないに興味を持つ人たちも多いかもしれません。
こうして自然と私達の意識の中に「呪術」や「黒魔術」が記憶され、永遠に消えることなく伝えられていくのです。
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