2001年に映画公開されるやいなや、興行収入308憶円という驚異の大ヒットとなった「千と千尋の神隠し」。
「鬼滅の刃 無限列車編」にこの記録が抜かれるまでは、長年トップの座を守り抜いてきました。
主人公である10歳の少女「千尋」が引っ越し先へ向かう途中で、不思議なトンネルを抜けた先にある神々の世界に迷い込むところから始まります。
この不思議な世界で千尋が働くことになるのが、神々が訪れる銭湯である「油屋」です。
夜になると八百万の神々が訪れ、「油屋」の湯に浸かることで疲れた体を癒していきます。
神々が温泉に浸かって湯治を行うという描写は、長野県飯田市上村・南信濃の神社で行われる「霜月祭」がモデルとされているのです。
千と千尋の神隠し油屋のモデル霜月祭
長野県飯田市で行われている「霜月祭」は、毎年旧暦の冬至前後に開催されています。
「霜月祭」は、聖なる湯を神様に捧げることで、万物の生まれ変わりを祈ることが目的です。
この祭では、大釜で沸かした煮えたぎる熱湯を素手で飛ばす「湯切り」という儀式が行われています。
湯切りによって素手で弾かれた熱湯を浴びた者は、病気にならないと信じられているのです。
ここまではよくある地方のお祭りといった内容ですが、実はこの「霜月祭」にはもう一つの目的があります。
それは、怨念を鎮めること。
この祭りが行われる地は、江戸時代初期まで氏族の遠山氏が支配していましたが、領内の揉め事や家督争いが絶えず、最終的には取り潰されてしまったのです。
遠山一族にも問題がありましたが、それよりも彼らの圧政に苦しめられていた百姓が一揆を起こし、幕府へと直訴した結果だと言われています。
百姓一揆によって遠山氏は滅亡したものの、この地で謎の疫病が蔓延してしまい、遠山氏の祟りだと恐れられるようになっていきました。
そこで「霜月祭」を行う際には、遠山氏の怨霊を鎮める舞を踊るようになり、鎮魂の意味合いも含めた祭事となったのです。
「千と千尋の神隠し」のモデルとして一躍有名になった「霜月祭」は国指定重要無形文化財に指定されています。
しかし、その裏に隠されているのは遠山氏の深い恨みが隠されていることも忘れてはいけないでしょう。
コメント