悪魔について、あなたはどんなイメージを持っていますか?
なんとなく「悪いモノ」「恐怖の象徴」「地獄の使者」など、マイナスなイメージを持つ人が多いかと思います。
漫画や小説など、数多くの創作物にも登場する悪魔ですが、基本的には「敵」として登場することが多く、海外のホラー映画では「悪魔祓い」を題材にした作品も人気です。
恐れられる存在として知られる悪魔ですが、どのようにして悪魔が誕生したのかを知る人は多くありません。
そこで今回は、悪魔とは一体なんなのか?悪魔がどのように誕生し、なぜ「マイナスのイメージ」を持つ存在になっているのかをお伝えしたいと思います。
神と悪魔は聖書によって誕生した
悪魔と言ってもあまりピンと来ないかもしれませんが、日本における鬼や天狗のような存在と考えるとイメージしやすいかもしれません。
英語で悪魔という意味を示すのは「Satan(サタン)」「Devil(デビル)」「Demon(デーモン)」など、複数の単語があります。
その中でもサタンは、悪魔の王という意味で日本で使われることが多いですが、元々サタンという単語はヘブライ語で「敵対者」を意味する言葉でした。
悪魔は新約聖書によって誕生した
聖書には、「旧約聖書」と「新約聖書」の2種類が存在しています。
- 旧約聖書…ユダヤ教の聖典
- 新約聖書…キリスト教の聖典
ユダヤ教の聖典である旧約聖書には、複数のサタンが登場しますが、これは「敵対者」という意味のサタンです。
この時はまだ、私達のイメージする悪魔とは違います。
ユダヤ教をベースにして新たにキリスト教が誕生すると、旧約聖書では「敵対者」として登場していたサタンが、新約聖書の中では悪魔の王として登場するようになりました。
イエス・キリストを「神」とする新約聖書では、敵対する「悪魔」として登場します。
つまり、キリストという神が登場したことによって、神と対をなす存在である悪魔が誕生したのです。
世界的に見て最も信仰されているキリスト教ですが、イエス・キリストが生まれなければ悪魔が誕生することも無かったと言えるでしょう。
このことから、キリスト教は悪魔を生み出した邪教として捉える考え方も出来ます。
実際に都市伝説ではありますが
神と悪魔の両方の語源となった「div」
悪魔を指す単語はサタン以外にもデビル(Devil)がありますが、これは元々ギリシャ語で「偽証・中傷」といった意味を持つディアボロスが語源です。
旧約聖書がギリシャ語で翻訳された際に「サタン」を「デビル」と訳されたことでデビル=サタン=悪魔として知られるようになりました。
他に悪魔を指すのはデーモン(Demon)がありますが、これは霊的な存在を意味するギリシャ語の「ダイモーン(Daimon)」が由来です。
ダイモーンもデビルと同様に、元から悪魔といった意味を持っていませんでしたが、旧約聖書がギリシャ語で翻訳された際に「霊的な存在」から「悪霊」という意味に変化しました。
「サタン」「デビル」「デーモン」という単語は、こうして神と敵対する存在であり、人間が恐れる悪魔を示す言葉として使われるようになります。
また、印欧語で輝くを意味する「div」の語源は、ギリシャ語の「ディアボロス」が語源になったとも言われています。
この「div」とは、サンスクリット語で神様を意味する「デーヴァ(deva)」、ラテン語で神様を意味する「デウス(deus)」、ギリシャ語で神様を意味する「ゼウス(zeus)」の語源となりました。
ディアボロスという悪魔でもあり、さまざまな国で神様を意味する語源にもなった「div」は、神様と悪魔という2つの相反する意味を持つ言葉の語源となったのです。
日本神話にも登場する悪魔のような存在
悪魔と聞くとイギリスなどのヨーロッパ圏やアメリカ圏のイメージが強いですが、神と敵対する悪魔のような存在は日本などのアジア圏世界中の宗教で見られます。
世界の宗教や神話に登場する悪魔
ゾロアスターという人物が開祖の古代宗教の1である、ゾロアスター教。
この教義では二元論の思想を基にしていて、神と悪魔が明確に分かれています。
善なる神であるアフラ・マズダーは「生命や光」といった力を持ち、邪悪な神であるアングラ・マインユは「死や闇」を司る。
また、このように明確にわかれているものだけではなく、古代の宗教で神は1人しかいないが善悪両方を兼ね備えていることも多かった。
例え神が1人だとしても、必ず善と悪の両面が存在していてる。
悪魔という存在そのものが宗教や神話などから誕生していることがわかります。
日本にも登場する悪魔のような存在
日本神話の中にも、悪魔のような存在は多数確認されています。
冒頭の方でもお伝えした通り、鬼や天狗もその類ですが、日本最古の悪魔的な存在は日本書記にも登場している。
日本最古の物語に描かれている日本という国を作った男女の神であるイザナギとイザナミも男女という相反する神様であり、神と悪魔のようなエピソードも載っています。
元々は夫婦であった2人の神様ですが、イザナミが死ぬと冥界へ行き、会いに入ったイザナギが悪魔のような姿になったイザナミに追い回され、冥界へと落ちたイザナミが「毎日地上の人間を1000人殺してやる!」と海外の悪魔もびっくりの大量殺人宣言をするほど悪魔的な存在として描かれています。
また、スサノオノミコトも勇敢で英雄のような神様といったイメージが強いですが、元々は暴れん坊な神様で英雄とはかけ離れた位置にいました。
このように、日本では神と悪魔の両方を性質を兼ね備えた特徴を持つものが多く見られるのが特徴的です。
信仰する宗教によって神にも悪魔にもなる
悪魔を調べていて1番面白いのは、信仰している宗教や生まれた国によっては、例え神様であったとしても悪魔として見られることもあるという部分です。
例えば、ゾロアスター教に登場した善を司る神であるアフラ・マズダの「アフラ」の由来はインド発祥の古代宗教であるバラモン教では悪魔として登場するアスラ(Asura)が由来となっています。
このアスラは、ヒンドゥー教でも魔族として扱われていましたが、ペルシャでは善良な神アフラ・マズダとして人々から信仰されているのです。
なぜこのようなことが起こるかというと、主に信仰している宗教の思想の違いが原因と言えるでしょう。
仮に「肉食」を悪とするAの宗教と「肉食」を正義とするBの宗教があった場合、この2つの思想は正面からぶつかり合うことになります。
肉食を悪としている側から見ると、肉を食べる事を許している神やその信徒は邪悪な悪魔のような存在になるのです。
こうして異なる思想や宗教観を持つ人々から、同じ神でも悪魔として扱われることも非常に多いので、数多くの悪魔が誕生しました。
悪魔とは、宗教や思想によって人間が「自分が信じている神が絶対に正しい」というエゴにより作り出された存在でもあるのです。
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